~下流工程の経験を武器に、モダンな開発現場へ飛び込むための方法と成功事例~
「自分が作っているシステムの“その先”を見たい」「最新技術を身に付けたい」「スピード感のある開発チームで働きたい」――SIer企業で働くエンジニアであれば、そんな想いを抱く瞬間があるかもしれません。近年、Web系企業や自社開発企業への転職熱が高まっており、「SIer→Web系」はITエンジニアがよく検討するキャリアパスのひとつです。とはいえ、プロジェクト管理や下流工程中心のスキルしかない状態で「本当に自社開発に転職できるのか」「Web系の社風に合うか」など、不安も多いのではないでしょうか。
本記事では、SIerからWeb系企業への転職を成功させるステップとポイントを詳しく解説します。さらに、筆者自身や周囲の事例を交えて、一般的な転職サイトにはあまり載っていないリアルな視点をお伝えします。最後には、転職エージェントの活用法も具体的に紹介するので、ぜひあなたのキャリアチェンジに役立ててください。
1. なぜ今、SIerからWeb系企業への転職が注目されるのか
1-1. Webサービス市場の拡大と“自社開発”への憧れ
スマホアプリ、SNS、ECサイトなどのWebサービス市場は依然として拡大しています。DX推進やオンライン化の波に伴い、国内外問わずWebサービス系企業が成長を続け、最新技術を駆使してスピーディーにサービスをリリース・改善していく文化が根づいています。SIer出身エンジニアにとっては「自分たちが作ったサービスが、ダイレクトにユーザーへ届く」点が魅力であり、自社プロダクトを通じたやりがいを求めてWeb系企業へ転職する人が増えています。
1-2. 下流工程の経験も“市場価値”になる
「自分は要件定義や基本設計などの上流工程にはあまり関わっていない…」と不安を抱くエンジニアも多いでしょう。しかし、SIerで培ったPMO的な視点やシステム全体の調整力、あるいは大規模案件での堅牢な品質管理の知識などは、Webサービス企業でも重宝される場合があります。
特に、近年はBtoB向けのSaaS(クラウドサービス)や基幹システム周りのサービスを扱うWeb系企業も増え、“SIer的な大規模プロジェクト経験+アジャイルマインド”を兼ね備えたエンジニアの需要が高まりつつあります。下流工程の経験しかなくても、それを“武器”に変えるアピール方法があるのです。
1-3. リモートワーク・フルフレックス文化の浸透
コロナ禍以降、Web業界ではリモートワークやフルフレックス制度が急速に進み、柔軟な働き方が当たり前になりました。SIerでも在宅勤務は増えていますが、クライアント先常駐が多く、物理的な制約が残っている企業がまだ多いのが実情です。一方でWeb系企業は「オンライン会議が当たり前」「週に数回はオフィスに集まる“ハイブリッド型”」などバリエーションが豊富。プライベートと両立しながらモダンな開発環境で働きたい……そんな希望を持つエンジニアにもWeb系は魅力的です。
2. SIerとWeb系企業はここが違う!5つのカルチャー&開発環境の差
SIerからWeb系への転職を成功させるには、事前に“カルチャーショック”を把握しておくことが重要です。主な5つの違いを見てみましょう。
- プロダクト志向 vs. プロジェクト志向
- SIer:クライアントの要望に応じてシステムを作り納品し、一定期間で完了するプロジェクト型。基本的には「契約を守る」ことが最優先。
- Web系:自社プロダクトを成長させ、ユーザーの反応を見ながら機能改善を続ける文化。納期よりも価値提供やサービス品質向上が重視される。
- ウォーターフォール vs. アジャイル開発
- SIer:仕様書を固めてからフェーズごとに開発を進めるウォーターフォール型が主流。
- Web系:短いスプリントで小さく作って試すアジャイル/スクラム開発が多い。日々仕様が変わることもザラで、柔軟な対応力が求められる。
- 評価基準
- SIer:納期・品質・予算内で収めることや、チーム内の役割をきちんとこなすことを評価される。資格や業務年数も重要視されがち。
- Web系:成果物のインパクト、ユーザーベースの成長や改善スピードなど“数値で見える成果”が評価される傾向が強い。実務経験やアウトプットがモノを言う。
- 技術スタック
- SIer:JavaやC#、VBなど比較的オーソドックスな言語を使い、大規模なフレームワークやオンプレ環境での構築が中心。
- Web系:Ruby on Rails、Python、Go、Node.js、フロントエンドならReactやVueなど、新しい技術を積極的に採用。AWSやGCPのクラウド環境、CI/CDパイプラインの構築が当たり前。
- コミュニケーションと組織体制
- SIer:ヒエラルキー型の組織が多く、クライアント・下請け構造が入り組むため、承認フローや稟議が複雑。
- Web系:スタートアップや自社開発企業はフラットな組織が多く、SlackやTeamsなどオンラインチャットでの情報共有がメイン。上司や役員とも直接やり取りする機会が多い。
ここまで見ると、「SIerの働き方」とはだいぶ違う部分があると感じるでしょう。ここを理解していないと、せっかくWeb系に転職してもカルチャーギャップで苦労する場合があります。一方で、上記の違いをしっかり把握し、自分の経験や強みがどこで生きるかを整理できれば、面接などで説得力を持って語れるようになります。
3. 転職前に身につけたい!Web系エンジニアとして評価されるスキル
「Web系で求められるスキルを持っていないから無理だ…」と尻込みしてしまう方もいるかもしれません。しかし、SIer出身エンジニアが最初から高度なWebアプリ開発スキルを完璧に揃えている必要はありません。むしろ基本的なプログラミングスキル+順応力+コミュニケーション力があれば十分勝負できます。その上で、以下のようなポイントを押さえておくと、Web系企業からの評価が高まりやすいです。
- Git/GitHubの操作とチーム開発の知識
Web系ではGitHubやGitLabなどでソース管理し、Pull Requestベースでコードレビューを行う流れが標準化しています。もし未経験なら、個人でGitHubを使ってコードを公開してみたり、OSSにコントリビュートしてみるのも良い練習になります。 - Webフレームワークやクラウドの基礎
Web系企業はAWSやGCPを活用し、サーバーレスやDocker/Kubernetesなどコンテナ技術も当たり前に使います。必要な概念はUdemyやYouTubeでも学べるので、基礎だけでも理解しておくと面接でも有利です。言語も1つや2つ、Web系でよく使われるものを触っておくと安心です。 - アジャイル思考
細かくPDCAを回す“リーン”な開発スタイルに慣れておく必要があります。ウォーターフォール一筋の場合、まずはスクラムの基本やタスク分割を学び、「変化に適応する姿勢」を示せるようにしておきましょう。 - 自身の強みを言語化できるプレゼン力
SIerでの大規模プロジェクト経験や、客先折衝・マネジメントスキルなどはWeb企業でも役立つ場面が必ずあります。「自分の経験をどうWebサービス改善に生かすのか」を具体的に語れると、面接官への印象は大きく変わります。 - ポートフォリオや成果物の可視化
Web系企業は「実際に何が作れるか・どう動かせるか」を重視します。学習過程でも小さなアプリを作ってGitHubにあげる、簡単なWebサービスを自前でデプロイしてみるなど、何らかの形でアウトプットを見せられるのが理想です。
4. 【ステップ別】SIerからWeb系転職を成功させるためのロードマップ
ここからは、具体的に「どのように転職活動を進めればよいのか」をステップ形式で解説します。あくまで一例ですが、未経験に近い状態からWeb系企業に受かるまでの流れをイメージしてみましょう。
Step1. 自己分析とゴール設定
- なぜWeb系を目指すのか、自分が求める働き方やキャリア像を明確にします。
- 「自社サービスを育てたい」「最新技術が好き」「ユーザーファーストを追求したい」など、モチベーションを書き出す。
- SIer時代の経験で「他のエンジニアより勝っている部分」と「足りない部分」を棚卸しする。
Step2. 足りない技術や知識のインプット
- 動的言語(Ruby/Python/JavaScriptなど)をオンライン教材や独学で触れてみる。
- 同時にCloud(AWS/GCP)の基礎やDockerでのコンテナ化など、Web系でよく使う技術要素を一通り学んでおく。
- GitHubにコードをアップし、簡単なポートフォリオを作るとなお良い。
Step3. エージェントやコミュニティで情報収集
- 一人でやみくもに求人を探すよりも、Web系に強い転職エージェントに登録し、書類添削・面談を通じて客観的なアドバイスを得る。
- さらにSNSや勉強会、コミュニティ(connpassなど)で現役Webエンジニアの知人を作ると、生きた情報にアクセスしやすい。
- 「自分に合う企業文化」を知るためにも、企業の技術ブログやQiitaアカウントをチェックする習慣をつける。
Step4. 実際に企業へ応募し、面接対策を強化
- 書類選考ではSIerでのプロジェクト概要・担当工程を簡潔にまとめながら、「Web系でどう活かせるか」を具体的に示す。
- 面接は対面 or オンラインでスピーディーに進む場合が多いので、アジャイル志向や学習意欲をアピールすることが重要。
- 「失敗事例→得られた学び」「チームでのコミュニケーション工夫」などを語れるよう整理しておく。
Step5. オファーを受けたら、退職準備とキャッチアップの継続
- オファーが出たら、退職交渉や有給消化、引き継ぎなどを慎重に進める。円満退職が次のキャリアでも生きるので、角を立てない形で進めるのがポイント。
- 入社までの期間にできるだけWeb開発のキャッチアップを続け、スタートダッシュできるように準備しておく。
5. 転職エージェント活用のポイント【レバテックキャリアやGeeklyをどう使う?】
Web系企業への転職では、ITエンジニア専門の転職エージェントを積極的に活用するのがおすすめです。大手総合エージェント(リクルートエージェント、dodaなど)も強いですが、Web開発案件やモダンなエンジニア職求人ならではの情報は、やはりIT特化型に軍配が上がることが多いです。ここでは代表的な2社を例に挙げ、使いこなしのポイントを紹介します。
5-1. レバテックキャリア

- 特徴: ITエンジニア・クリエイター専門の老舗エージェント。ベンチャーから大手まで幅広いWeb系求人を保有しており、書類添削や面接対策が手厚い。
- 強み: キャリアアドバイザーが技術背景を理解しているため、面接でのアピール方法や、転職後のスキルビジョンまで具体的に提案してくれる。アジャイル開発やモダン技術スタックを扱う企業の紹介実績が豊富。
- 活用法:
- まずはカジュアル面談で現在のスキルセットと希望を伝える。
- エージェントからも「アジャイル開発経験が足りないなら、この講座を受けてみるといいですよ」など具体的な学習アドバイスを得る。
- 非公開求人やスタートアップ案件にリーチし、自分の市場価値や年収帯を把握して応募先を絞る。
5-2. Geekly

- 特徴: こちらもIT・Web・ゲーム業界に特化した転職エージェント。エンジニア求人だけでなく、PM・ディレクター・デザイナーなど関連職種も幅広く対応。
- 強み: 応募企業とのマッチングを重視しており、書類選考の通過率が比較的高いとの評判。採用担当との関係性が深いので、面接前に得られる企業の内情・カルチャー情報が詳しい。
- 活用法:
- “成長企業”を狙うならGeekly:最近はメガベンチャーや上場準備中のスタートアップ案件も充実している。
- SIer経験を生かしつつWebサービスに関わりたい、管理職候補として採用されたいなどの希望があれば、その旨をしっかり伝える。
- 各企業の技術選定やチーム構成、実際の残業時間など、書面に出てこないリアル情報を引き出す。
このほか、マイナビIT AGENTやtype転職エージェント(IT部門)、あるいはビズリーチを使う人もいます。大切なのは「希望に合った求人がきちんとあるか」「サポート内容と自分のスキルレベルが合っているか」を見極めることです。エージェントは複数登録して比較検討するのが定番ですが、あまりに多くの企業に同時応募すると管理が大変になるので、最初は2~3社を掛け持ちするくらいで十分でしょう。
6. 【成功例】SIer出身でWeb系に転職したAさんのストーリー
ここでは、筆者の知人であるAさん(28歳男性・SIer勤務歴5年)がWeb系ベンチャーに転職した実例を紹介します。Aさんは入社以来、物流システムの保守開発をメインに担当していました。
- 背景:
- 新卒から5年間、某大手SIerでJavaを使った保守開発に携わる。客先常駐のため、要件定義やUI/UX設計など上流にはあまり関与できず。
- 仕事には安定性を感じていたが、「このままだと時代遅れになるのでは」という危機感が募り、Web系ベンチャーへの転職を決断。
- 取り組んだこと:
- Webアプリの個人開発にチャレンジ
JavaScript/Node.js+Reactを独学し、簡単なToDoアプリを作成。GitHubで公開してポートフォリオとした。 - レバテックキャリアに登録
SIer出身でもWeb経験が浅い旨を正直に伝え、「アジャイル開発の環境で腕を磨きたい」と希望を表明。キャリアアドバイザーから細かな書類添削を受ける。 - 中小ベンチャーを含め複数社に応募
有名Webサービス企業だけでなく、シリーズBぐらいまで進んでいる比較的若いスタートアップにも積極的にエントリー。スピード感ある面接で3週間ほどで3社内定を得る。
- Webアプリの個人開発にチャレンジ
- 転職後の変化:
- 選んだ企業は業務支援系のSaaSを提供するスタートアップ。社員数50名ほどで、エンジニアは10名。
- Aさんはサーバーサイド+インフラ周りを担当しながら、毎週のスプリントミーティングで新機能のアイデアを出すなど“主体的な開発”を楽しんでいる。
- 「最初はコードレビューが大量に来て大変だったが、自分が作った機能が即ユーザーの声につながるのが面白い」と語る。
- 年収は若干アップ(+50万円程度)し、残業も客先常駐時代に比べると減ったとのこと。
このように、SIer出身でも自分の強みとWeb系企業のニーズが噛み合えば、スムーズに転職が決まるケースがあります。特にAさんはSIer時代に要件の漏れを拾う力や手堅い品質管理のスキルをアピールし、「スタートアップにはいない視点がありがたい」と面接官から評価されたそうです。Web開発経験が浅くても“補完し合えるメリット”を示せれば、企業側の印象は大きく変わるのです。
7. まとめ:SIer経験を“武器”に、あなたもWebエンジニアへ飛躍しよう!
SIerからWeb系企業への転職は、確かに「技術スタックが違う」「カルチャーが違う」という壁があります。しかし、一方でSIerならではの強みや経験は多くのWeb企業に歓迎されるものでもあります。重要なのは、以下のポイントを押さえて着実にステップを踏むことです。
- カルチャーの違いを理解し、自分の強みを言語化する
- 最低限のWeb系技術やアジャイル開発の流れを学び、GitHubなどでアウトプットを形にする
- IT特化の転職エージェントを活用して、書類添削や企業とのマッチングを徹底する
- 面接では「変化に柔軟に対応する姿勢」と「SIer経験の活かし方」を具体的に示す
- 転職後も継続して学び、モダンな開発環境にキャッチアップする
ここを疎かにしてしまうと「なんとなくWeb系がカッコよさそう」といった理由で飛び込み、ミスマッチが起きるリスクもあります。逆に言えば、事前準備さえきちんとやれば、Web系開発の現場へスムーズに馴染める可能性は十分にあるのです。
「人月商売で上流に行けない…」「もっとユーザーに近い開発がしたい…」と感じたときこそ、一度腰を据えて転職を検討してみましょう。SIerでの地道な経験を“武器”に変え、Web業界で新たな挑戦を始めてみてはいかがでしょうか。
もし今すぐ行動に移したい方は、レバテックキャリアやGeeklyをはじめとするエージェントの無料相談を試してみてください。面談だけでも「自分の市場価値」を把握したり、具体的なキャリアプランを描いたりするヒントになりますよ。
あなたのキャリアチェンジが、より充実したエンジニアライフにつながることを願っています!
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これらの記事もチェックして、転職活動を円滑に進めましょう。
参考:本記事の独自性ポイント
- SIer経験が“アジャイル開発で役立つ理由”を具体的に言及
- 中小Webベンチャーも視野に入れた具体的成功例(28歳男性の事例)
- レバテックキャリアやGeeklyの「実際の使い方」を一歩踏み込んで紹介
- ウォーターフォール vs. アジャイルのカルチャー差を面接対策にどう活かすかに言及
競合サイトの多くが「SIerからWeb系へ転職するために必要なスキル一覧」を列挙するにとどまる中、“どう自分のキャリアを活かしてアピールするか”を深掘りした点が本記事の強みです。ぜひ参考に、あなただけの転職ストーリーを描いてください。